高資料倉庫

わかっていても、止まらない……

 午後の昼下がり、伝票整理と称して地下の資料倉庫にいた私。

 しかし実際には誰も来ないこの部屋で、一人ですることがあった。

「あふぅ……あぁぁ……」

 棚に寄りかかるようにして、吐息を洩らす。

 その手は制服のシャツのボタンをはずし、ブラの隙間から手を差し入れ胸を弄ぶ。

「あぁ…幸也ぁ……」

 もう、1か月も会っていない、愛しい相手の名前が口について出る。

彼のに愛撫をされているように手が動き、いつしか手はスカートの中に差し入れる。

ショーツは、すでに蜜で湿り気を帯び、軽く押しただけでもクチュと音を立てるほどだった。

“やらしいなぁ、京子”

 どこからそんな声が聞こえてきそうで、私はさらに体を熱くしてしまう。

 指はショーツを避けて蜜の溢れる蜜壺の中に飲み込まれていく。

ゆっくり早く動かしながら、もう片方に持っていたものを目の前に持ってくる。

 それは黒く太い、男性器を模した大人の玩具。何度も舌で舐めずり、まるで本物を口に含むように十分に湿らすと

待ちきれないようにうごめく蜜壺の中に埋めていく。

「あぁ…あぁぁぁぁぁ…・・・・・・・」

 作りものなのだから、本物と同じとはいかないが、それでも欲しい刺激を与えてくれる。

 スイッチを弱めに入れて声を上げる。

昨日も同じようにここで自らを慰めたというのに、満たされることはない。

それでも今はこれだけが自分を満たしてくれるものなのだ。

“逝くのかい? 京子”

「あぁ……逝く、逝くわ、幸也……逝っちゃうぅぅ………」

 腰を揺らし、彼に突き上げられるかのようにバイブを動かす。

外に響いてもおかしくないくらいに喘いで、呆気なく逝ってしまった。

「はぁ、はぁ……はぁ……はぁ・・・・・・・・」

 ずるずると床に座り込んだ私はしばらく動けず、しばらく息を整えるように何度も深呼吸を繰り返す。

バイブは中の収縮で外に押し出され、ゴトリと音を立て床に落ちた。

 地下にあるから明かりは蛍光灯だけ。時計もないから、今がどのくらい経っているのか分からない。

(そろそろ戻らなきゃ……)

 一応理由をつけて離席してきているとはいえ、あまり長い時間では同僚も不審に思うだろう。

 身なりを整えて戻らなくては……そう思って立ち上がろうとした、その時だった。

「こんなところで何をやってるんだい? 沢野さん」

 突然上から下りてきた声に、私は見上げて目を丸くした。

「ぶ、部長……」

 いつの間に入って来たのだろう……そこに立っていたのは、今はいるはずのない人だった。

「仕事もしないでこんな所で……ずいぶん楽しんでるじゃないか?」

 ずっと逢いたいと願ってやまなかった人物……

しかし、その顔は何か企んでいるかのような表情をしていた。

「こ、これは……」

「こんなに濡らして……どれだけいやらしいんだ? 京子」

 目の前に来て視線を合わせるように膝を折ると、有無を言わさずスカートの中に手を伸ばす。

躊躇いもなく指先は中心に触れ、恥ずかしいほどに濡れたそこをなぞる。

「や、やめてください、部長……」



「二人きりの時は幸也って呼ぶように言ってただろ?」

 そう言ってる間に半端に乱していた私の制服はほぼ脱がされ、彼の指は否定する

口とは裏腹にツンっと飛び出した私の乳首をつまんでいる。

「そんな……ここは会社で……誰か来るかも、知れないじゃないですか……っ」

 執拗に一点集中でいじられ、私はビリビリと感じて声を洩らしながら、無駄なけん制する。

「大丈夫だよ。よっぽどなことがない限り社員はここに来ない。それは君も知ってるだろう?」

 確かに、ここには伝票などを一定期間保管するための部屋だから、期間が切れて処分するとか

社内調査の時ぐらいにしか部署の人間も入らない。

「だからここを選んだんだろう? 聞いたよ、昨日もここに籠っていたそうじゃないか。過去の伝票を調べるからと」

 しかも僕の指示だって? そんなこと、頼んだ覚えはないが?

 まるで尋問するみたいに言いながら、その手は私の身体をさまよう。

 時に優しく、時に強く……緩急をつけた責めに、私は腰が浮いてくるのを感じた。

「それは……」

「それは、これで慰めるためかい?君もイヤラシイものを持ってるんだね」

 他の社員が知ったらびっくりするだろうね。

 そう言って手にしているのは、彼が来るまで私の中で暴れていたおもちゃ。

グロテスクでリアルなそれは、何を隠そう、この男が私にプレゼントした代物だ。

「だって、それは部長が……」

「確かに、僕が君にあげたものだね。でも、会社で使っていいなんて言ってないじゃないか」

 やっぱりお仕置きが必要だな……。

 彼はにやりと笑うと、その代物をまだ乾ききらない私の蜜壺に一気に突き立て、スイッチを最大に入れる。

「ひあぁぁぁぁぁっっっ」

 背がのけ反るほどの快感が身体を駆け巡った。

そんな私にお構いなしで彼は更に激しく動かした。

 自分で使うときは加減しているから、逝ってしまえばそれまでだったが、他人の手に委ねられれば、それはその人の意志で使われる。
 
ましてやこの男なら、容赦なく……

「あっ、あぁぁ、やめてくださいぃぃぃぃぃぃっ」

「お仕置きだと言ったろう? 会社で、しかも仕事中にこんな淫らなことをしているなんて、イケナイ子だ」

 彼に見られているとも知らず一人で慰め、逝ってしまった後だけに、すぐに絶頂が訪れる。

「お願いぃ許してぇぇぇ……逝くっ……逝っちゃうぅぅぅぅぅ」

「おもちゃで行くのかい? 京子。逝ってごらん。僕にいやらしい顔をさらして逝くんだ!」

 私は許しを請うように声をあげ、彼にしがみつくような形でまた絶頂を迎えた。

 その様を彼は嬉しそうに見つめて笑った。

 絶頂に達し、すべての力が抜けてしまった私は、腕も足も床にだらりと落としうつろに見上げた。

 不意に体を起こされ、柔らかく抱きしめられた。うっすらと浮かんだ涙でぼやけた視界の向こうには、間違いなく梶田の姿があった。

「京子、またいやらしくなったんじゃないか?僕に会えなくてそんなに寂しかったのかい?」

「幸也ぁ……」

 さっきの意地悪な表情とは違ういつものやさしい顔に、私は漸く安心した。

 社長の代理とはいえ海外出張で1か月も顔を見なかったのだ。

毎日職場で会い、週末ごとに濃厚な時間を過ごしてきた身にとって、1か月も放置されるのは何にも耐えがたいつらさだった。

「悪かったな、連絡もできなくて」

 そう言って抱きしめてくれる。それだけで自分が“愛されている”と実感できた。

 たとえ許されない関係だとしても、心が満たされる。

「いいんです……こうして顔が見られればそれで」

「……じゃあ、埋め合わせをしなくちゃいけないね」

 今夜、残業できる?

 それが何を意味するか、すぐに察した私は無言で頷く。

 身体の奥から熱い何かが湧き上がるのを、感じていた。



The end・・・・・・・