甘い唇
[ それで…今日は私引き立て役なわけ? ]
この日私はまもなく結婚式を挙げる友人の友美と新郎になる健太郎に連れられて衣装合わせにつき合わされた。
貸し衣装に迷った友美はお店の人に言われていくつか実際に試着してみて、気に入ったのを細かい衣装合わせする事にしたわけだ。
何事にも決断力のない友美…
よくもひとりの男にしぼれたもんだと私は内心思っていた。
ここに至ってあたふたと目移りする友美。
どうせ数分しか着ないなら適当でいいじゃない…
[ 友美、私あっちで待ってるからね ]
痺れを切らした私は外で待っていようとしたら、お店の人が奥の小部屋を勧めてくれた。
この分じゃ陽が暮れてしまう…
煙草も吸いたいし、外より中の方がいいか。
[ サイズ合わせもあるし、健太郎もいいわよ ]
友美は退屈そうにじっと待っている健太郎を気遣って奥で座ってるようにと解放してやった。
狭い待ち合い室。
会議室の長テーブルが二つ寄せてあって同じく椅子が4脚と灰皿が二つ…
店員さんが食事したりする部屋かも知れない。
[ 悪いね…つき合わせちゃって。 ]
健太郎が照れくさそうに言った。
[ いつもの事…これで私の役目は終わりだかんね,今度からあんたが面倒みてやってよ ]
今さらながら私が冷やかすと健太郎はまた照れくさそうにする。
私は煙草の箱を開けて思い出した。
しまった、一本しかないや…
買ってくるの忘れちゃったよ…
最後の一本に火をつけて灰皿を引き寄せると…
[ あっ、悪い…煙草一本ちょうだい・・・忘れて来ちまった ]
健太郎がポケットを叩きながら私にいう。
私は空の箱を振りながら
[ ごめん、最後の一本だったんだ ]
[ 俺…そこら探して買ってくるわ さとみ、カード持ってない? ]
[ 私、カード作ってないのよ 何だか面倒くさくて… ]
[ なんだ、俺もさ… ]
[ とりあえず一緒に吸う? ]
私は自分の口紅がついた煙草を勧めて見た。
半分冗談のつもりだったが健太郎は悪りぃ…って一口吸った。
間接キス?…
退屈だからちょっと健太郎をからかってやろうと私は思う。
[ どう?私の味… ]
[ うん…やっぱ、ちょっと軽いかな… ]
[ 軽い女で悪かったわね ]
私は笑いながら返した。
[ さとみの話じゃねぇよ ]
[ あら、間接キスの味を聞いたのよ ]
[ うん…甘いかな ]
私は大笑いしてみせた。
健太郎って普通なんだけど、どこか間が抜けてるというかリアクションが面白い男なのだ。
[ それにしても長いね ]
ひとしきり笑ったら健太郎がぽつりと呟いた。
[ あんたね、まだまだこんなもんじゃないわよ ]
[ 悪いね、今度はさとみの番だな ]
[ 私?…私はまだまだ結婚なんかしないわよ 軽い女ですもの… ]
[ まだ言ってる… ]
[ あら?試してみる? 唇はもっと甘いわ ]
そう言って唇に指をあててまた笑った。
健太郎も笑っていたが少し恥ずかしそうにしていた。
ここで恥ずかしい顔されたら言った私が恥ずかしくなってしまう…
それからしばらく私たちは他愛もない会話をポツリポツリとしていたが
健太郎は立ち上がるとテーブルを回って私の後ろに立ち、肩を揉みながら言った。
[ 俺…ちょっとコンビニでも探してくるわ… さとみの煙草、何だっけ? ]
[ あぁんっ…気持ちいい… 私の唇でも吸う? ]
本気にするとは思わなかったが、これで空かされても私としてはまた恥ずかしい。
健太郎は顔を寄せて私の唇を吸い始めた。
せっかくだから友美の男でもごちそうになっちゃえと思って私は健太郎の髪を引き寄せる。
ガタンと椅子を倒して立ち上がり、私たちは激しいほど抱き合った。
何か言おうとしたけれど、何も見つからない…
健太郎は椅子を起こして座ると、膝の上に私を横抱きにする。
[ いい男なのに…結婚しちゃうんだ… ]
健太郎に顔を寄せてシャツのボタンをいじりながら囁いてみせた。
私たちはまた唇を合わせ…
互いに交わり合うかのように唇をつけたまま顔を動かした。
健太郎の手…
シャツの裾から忍び込んで私の胸の中でブラを跳ね上げてのた打ちまわる。
んっ…んっ…
吐息がキスの中に溶け込んでいく。
デニムのスカートをたくし上げて膝の上で少し開いた熱い部分に…
[ 恥ずかしい…後ろの方にまで垂れちゃってるよ… ]
私は健太郎の首に腕を回しながらテーブルに手をついて体を支えた。
健太郎の腕はぐいっと私が落ちないように体を引き寄せてシャツの上からまた乳房を掴んだ。
右手はスカートの中でぐしょぐしょになっている。
あっ…はっ…ぁ…
じん…ときて、空いた手で健太郎の硬さを確かめるように指先を探らせた。
もう、たまらなくなった私は健太郎の膝から降りる。
前を開けて掴み出すと口の中で処理してあげようと思ったのだ。
この後、私をさっさと帰して友美に出されたら何だか癪にさわる…
くちゅ…くちゅ…
ちゅっ…ぱっ…
健太郎は私の顎に指をかけて私の口から自分のものを抜き出した。
そして私の下着を下ろしてしまって茂みの下にキスすると自分の上に私を跨らせて抱きしめた。
あっ…あっ…
あっ…あんっ…
ギシッ…ギシッ…
ギシッ…
もうすでに誰の男だろうが止まらない。
私の透明のボトルにピンク色のシェリー酒がゆっくり注ぎ込まれて波打つような思い…
あぁっ…ぁ…っ
下から白いカクテルが注ぎ込まれている。
[ ふぅ…っ ]
[ やべっ、中に出しちゃったよ ]
[ いいわよ…できちゃったら引き取ってもらうから… ]
私はこう見えてもまだピルを飲んでいる。
しばらくして止まった空気を掻き立てるようにノックが響いた。
慌てて飛び退いて下の口をきゅっと絞めつけて立つ。
健太郎も慌ててチャックを上げた。
挟むと面白かったのに…
[ 花嫁様がご覧頂きたいそうです ]
店員さんがなぜか少しだけドアを開けてそう告げる。
私はトイレに行ってから衣装合わせの部屋へ向かった。
ふだん私は使わない派だけど、今日ほど洗浄機がついていて助かった事はない。
友美の花嫁姿…
たしかに綺麗だった。
[ ずいぶん長トイレね…ウンチしてたでしょ? ]
[ あんたに言われたかないわよ ]
花嫁衣装を纏ってライトに照らされた友美がいうと店員さんたちもクスクス笑った。
[ 私の花婿食ってたんでしょ?口紅ずれてるわ… ]
[ ごちそうさまでした ]
店員さんたちもたまらなくなって笑い始めた。
友美は自分の花嫁衣装に照れてそんな事を言っているのだ。
それは…
後日、照れて言った事ではなかった事を私はベッドの中で健太郎から聞いた。
The end・・・・・・・