目覚め-1

忘れかけていた映像が、蘇えっていた。

上りきった階段のすぐ傍にある扉。

隙間からは、シンプルな色で纏められた室内が見える。

八年ぶりの、自由に出入りしていた五つ年上の幼馴染の家は、何も変わっていなかった。

姉の同級生だった翔ちゃんのこの部屋も、雰囲気はそのまま。

懐かしい―――・・・翔ちゃんの笑顔と、写真に写る昔の自分たちに再会した喜びを、今も感じていたはずなのに、私は中に入ることができない。

まだ俺の部屋に、アルバムがあるから取って来いよ・・・そう翔ちゃんに言われて二階に上がったのに、足がピタリと止まる。

私はあの時と同じ場所。同じ角度で部屋を覗いた途端、あるはずのない姿を、はっきりその瞳に映し出していた。

戻った記憶は、自分までも12歳に戻していく。

息を潜め、大きくなる鼓動と共に、男と女の声を聞いた。

「あん、アッ、あっ・・・あ・・・」

「すごい善がりようだな」

ククッ・・・と男は笑った。

中途半端にズボンを下ろし、全裸で四つん這いになる女を攻めていた翔ちゃんだ。

私は目を奪われた。

初めて見る男女の交わり。

体験したことのない、セックスという名の行為。

翔ちゃんのグロテスクなモノが見え隠れするたびに、喘ぐ女。

「こんなに涎を垂らして」

「あっ・・・」

「俺のをぶち込まれて、そんなに嬉しいのかよ」

「言わない、で・・・あぁんっ・・・!」

白い肌を、上気させる姉に息を呑んだ。

どんどん・・・どんどん・・・淫らになって髪を振り乱す。

「あっ・・・いいぃ――・・・あぁっ・・・!」

グチャグチャにされながらも、悲鳴に似た嬌声を上げる。

快感の表情を浮かべる。

そんな姉に、抑えきれない胸の高鳴りを覚えた。

異常なまでの興奮が湧き出し、羨ましさから自分と姉を重ねては下半身を疼かせた。

「俺にもいい思いをさせろ」

「んうっ・・・」

「締めて、気持ちよくさせろっ」

「はぁぅんっ・・・」

鼻にかかった姉の甘い声と、熱い吐息をシンクロさせ。

「締めるんだよ!」

「アッ、あっ・・・」

「喘いでないでマンコに力を入れろ!」

「んっ!」

翔ちゃんの、普段よりきつい甚振る口調に下着を濡らした。

激しい打ちつけと、局部からのいやらしい交接音。

「ふ・・・あ、すごい・・・すごいよ・・っ!」

うわごとのように呟き、

「も・・、も・・ダメ! あたし・・アッ、イッちゃうっ・・・!」

絶頂に追い込まれる姉のカラダに、私の手は動いた。

汗ばんだ掌が自分の腹部を這い、指が服の下を潜る。

直に素肌に触れ、疼く箇所へと僅かに移動した直後。

人の気配がした。

気が付けば、肩越しには翔ちゃんの顔。

同じ位置に視線を置き、私が覗いていたところを見ている。

「なんか、いるのか?」

驚きよりも、間近で動く唇に吸い込まれそうになった。

現実に引き戻されたにも関わらず、まだあの記憶が尾を引いて興奮は治まらない。

カラダもアソコも熱い。

中からトロトロ蜜が溢れる。

「ここで・・・見てたの」

不意に出た私の言葉に、翔ちゃんは首を傾げた。

「お姉ちゃんと、してたコト」

言うと、少し焦っていた。

胸に手を添えると、喉を鳴らしている。

「ねぇ・・・して・・・」

私は擦り寄り、顔を近づけた。

唇をゆっくり寄せ、

「お姉ちゃんみたいに、して欲しいの・・・」

翔ちゃんの唇ギリギリの距離で囁くと、そっと、キスをした――。

「おい、ちゃんとしろよ」

頼み事はすんなり受け入れられた。

翔ちゃんは私を、姉のように抱く。

後ろから肉棒を突き刺し、両腕を引っ張りながら、腰を前後に揺らす。

「もっとこっちに、ケツを出せ」

「アァ・・・ッ!」

ねじ上げられた腕の痛みで、思わずうめきが漏れた。

そんな私に構うことなく、翔ちゃんは進める。

出しては入れ、また抜いては埋め。徐々にスピードを早めていく。

「んっ、ンンッ!」

不服なのだろうか。

翔ちゃんの奥を突く一撃一撃には、容赦はない。

もっと鳴け・・・言わんばかりに力を込めている。

「気持ちよく、なりたいんだろ!」

「うっ・・・」

「して、欲しいんだろっ!」

「んあっ!」

束縛していた腕は解いてくれたが、刻むテンポは変わらない。

身悶える私への扱いは乱暴なままだ。

ひっきりなしに卑猥な音を響かせ、摩擦の回数を増やす。

秘部を麻痺させる。

腰をぶつけ続ける。

「アッ、待って・・」

私は荒々しい攻めに、上半身を崩した。

「翔ちゃ―・・・ま・・・テェッ!」

掴まれた腰だけで支えられながらも、静止を促した。

でも翔ちゃんは止めるどころか、尚も揺れを激しくする。

「待つわけ、ないだろ」

「あっ!」

「お前が・・・クッ、頼んだんダッ」

「い・・・ッ!」

「咲子みたいに、シテってなっ」

「・・・そっ・・・」

「だから理子にも、ふっ・・・こうして」

クリトリスに手が伸びた。

触れて、一・二度撫でると・・・。

「いやァァッ! 痛い―――・・・・っ!」

爪をグッと、食い込ませた。

反り返る私の背後で、翔ちゃんは呻く。

欲望を吐き出して、最後の一滴まで搾り出して、低く笑う。

「は・・・・めちゃくちゃにされたのが、そんなによかったか」

独り、後始末をしながら口元を緩める。

その顔をぼんやり見ていた私は、思っていた。

違う・・・。

確かに感じた・・・・けど。

あの時味わった感覚とは違う。

いいえ・・・・違った―――と・・・。

家に帰ると電話した。

以前から数回、好きだといってきた後輩を呼び出す。

そして、

「気持ちいいでしょ」

目を細め、順平のペニスを扱いた。

時折亀頭を舐めては竿全体を擦る。

「んぅ、あっ・・・あぁ・・・もう・・・」

「もう我慢できないの?」

見上げると、順平は必死で頷いていた。

「出したい・・・」

上擦った声で訴え、放出を今か今かと待ちわびている。

私は指を強めた。

往復を繰り返す動きを早め、順平のペニスを限界近くまで膨れ上がらせた。

「いいよ・・・」

「理子さ―――・・・ああぁっ!」

「イって」

「手を・・――ッ!」

順平は涙を浮かべた。

言葉とは裏腹な行動を取る私。

猛りの根元をきつく押さえて、放出を許さないに左手に、顔を歪ませた。

「あっ、離し・・て」

「ほら早く」

「んっ!・・・・お願い・・・・手を・・はぁぁぁぁ――っ!」

だらしなく開かれた唇と同様に、だらしなく蜜を滴らせる先端に、私は笑う。

湧き出てくる、異常なまでの興奮を胸に抱いて、ほくそ笑む。

そう――・・・。

私が重ねていたのは翔ちゃんだ。

攻められ、甚振られ、グチャグチャにされていた、姉じゃない。


The end・・・・・・・