恋人以外の男
「中に出していい?」
「それはだめ。」
生で入れている時点で何の避妊の効果もないのはわかっているけれど、中に出していいのは将来の旦那さんだけ、というポリシーがあたしの頭ん中にある。
ふと彼があたしを抱き起こして座位の体勢になった。
そのまま深い深い口付けをする。
彼はあたしの背中を摩りながら、あたしはより強くしがみつきながら。
多分これを外から見たらすごく綺麗な光景なんじゃないだろうか。
思わず絵に描いてみたくなった。
セックスは芸術であり美学である、とつくづく思う。
そのまま今度は彼が下になり、最初はあたしが前後に腰を揺らした。
少しの間乳首を弄んでいた彼は、突如激しく突き上げてくる。
「あんっ、あっ、あっ、んっ」
あたしはその激しい攻めに対して、下を向き歯を食いしばって耐えることしかできない。
奥まで痛いくらいに突かれたあと、彼は突然起き上がったかと思ったらあたしを組み敷き、脚を持ち上げてまた突いてくる。
奥底に彼が打ち付ける度に全身がさざ波立つような感覚に襲われる。
「あっ、はぁんっ、あんっ、イキそ…あんっ、あぁっ」
「俺もそろそろやばい」
そう言って彼は突如スピードを上げた。
「あっ、いやっ、あっあっあっあっ、ッ…!!」
「あぁっ、イクッ!!」
互いに目をつぶったまま頂点に達し、引き抜いた彼自身があたしのお腹の上を真っ白に汚した。
「セフレが欲しいんだよね」
彼が3ヶ月前にワインを口にしながら言った。
「あっそ」
わざわざセフレなんかつくらなくても相手は沢山いるだろ、と思いつつクラッカーを噛りながらそっけなく返事をした。
「もう恋愛とかめんどくさ。たまに欲求解消ができればそれで充分」
「確かにあんたみたいな奴は結婚とかしない方がいいだろうし、それ以前に恋人作んない方がいいかもね。相手が可哀相だわ」
なんでこんな男がモテるのだろうと、心底不思議になる。ナルシストとか遊び人とか、全部こいつが生み出した言葉じゃないかと思ってしまう。
「いや結婚はしたいんだよ。10年後くらいでいいけどさ」
「その頃には誰も見向きもしなくなってるよ」
「お前こそそのがさつな性格直さねーと誰も貰ってくれねぇぞ」
「そんな無理矢理おしとやかに振る舞ってたら息が詰まるっつの。ある日突然本性現わすよりも、最初からありのままの自分をさらけ出した方がいいでしょ」
「はいはい」
ああ言えばこう言うあたしをやれやれといった感じで適当にあしらって、彼は窓の外を見た。
「ねぇ」
「何?」
「お前ってさ、普段がざつな分ベッドの上だと女の子らしくなるんじゃないの?」
にやっと笑いながら彼が言った。
「ふざけんな。あんたの性欲処理の道具にはならないよ。あたしに何十人姉妹ができるかと思うと恐ろしいわ」
「まぁまぁまぁ」
「ちょっ…」
強引に口付けられてそのまま押し倒された。
突然の行為に、ご無沙汰だったあたしは不覚にも火が着いてしまったのだった。
あれからもう3ヶ月は経つ。
恋人以外の男とするセックスはある種のゲームだと思っている。
はめたら勝ち、はめられたら負け。
実際に自分も気付かないうちに相手に夢中になってしまい、泣きをみた経験が一度や二度ではない。
こういう八方美人な奴には特に警戒が必要だ。
「俺のことも気持ちよくしてよ」
あくまであたしの持論だけど、遊び慣れてる男は女を一通り攻めた後に必ずこう言う。
だからあたしの中にも大体のシナリオが出来上がっていて、挑むようにひとつひとつ実行していく。
「うっ、あぁ…」
さっきまで主導権を握っていた男を支配できるこの瞬間が好きだ。
陰嚢を舐め回しながら吸い付いたり、手で転がす。
竿を強弱をつけて上下に扱きながら先端を口に含む。
そして喉の奥にあたりそうなくらい、深く深くくわえ込んで、思いきり吸いながら頭を上下に動かした。
「っ、はぁっ…、あっ」時折うめく彼。
あたしの長い髪の毛を大きな手でよけて、あたしが彼自身に奉仕する姿をまじまじと見つめている。
それはより大きく、より固くなった。
陰嚢を舐め回しながら吸い付いたり、手で転がす。竿を強弱をつけて上下に扱きながら先端を口に含む。
そして喉の奥にあたりそうなくらい、深く深くくわえ込んで、思いきり吸いながら頭を上下に動かした。
「っ、はぁっ…、あっ」
時折うめく彼。あたしの長い髪の毛を大きな手でよけて、あたしが彼自身に奉仕する姿をまじまじと見つめている。
それはより大きく、より固くなった。
「もうやばいかも…」
その言葉を聞いて、あたしはより激しく吸い付きながら上下するスピードを増した。
「あっ、あっ、あっ、イクイク…!」
びゅくびゅくと膨張と収縮を繰り返しながら、それはあたしの口の中に液体をあふれさせた。
放出が収まったあと、彼を見つめながら飲み込み、敏感になっているそれを綺麗に舐め回した。
その後彼はあたしをあお向けに寝かせて両足を大きく開き、そこに顔を埋めた。
入口と突起を舌で往復したり、突起を嬲られたり、時には舌が中に侵入して激しくうごめいた。
「あぁん、あんっ」
指では絶対出すことのできないその感触に、あたしは熔けてしまいそうだった。
でもしばらくするとやっぱり、奥深くに欲しくなる。
「ねぇ…、中…して…」
「中に何するの?」
「わかるくせに」
「わかんない」
「ばかッ」
いたずらな笑みを浮かべる彼に、あたしは拗ねてみせた。
「しょうがないなぁ」
彼はそう言うといきなり二本の指を差し込んできた。
「あぁっ!!」
その衝撃に耐える間もなく、あたしの一番敏感な部分を彼の指が強く刺激する。
「いやっ、いやっ、あんっ、あっ、あっ、あっ」
あたしはシーツを掴み体をのけ反らせながら、快楽に溺れた。
「入れていい?」
「いいよ」
ゆっくりと彼があたしの中をいっぱいにしていく。
全部入ると、あたしは目をつぶって大きく息を吐き出した。
ギシギシとベッドが軋み始めた。
「んっ、んっ、あんっ、あんっ、あんっ」
差し込まれる度につい声が漏れる。
この感覚を気持ちいいと名付けたのは誰だろう。
体中が痺れるような、壊れるようなこの感覚。
でもね、なんか最近それだけじゃない気がするのは気のせいだろうか。
胸が締め付けられているのに、気付かないフリをしている自分。
「あぁっ、あっ、あんっ、あっ、あっ、もうだめっ…!」
「うっ…」
幾度も小刻みに震えながら彼は欲望を満たしていた。
いつものようにあたしのお腹の上を汚して。
認めたら、負けになる。
それとも、もう既にあたしは負けているの?
気付いてほしいけど、気付いてほしくない。
あんたの気持ちを知りたいけど、知りたくない。
その声が、その仕草が、あたしをどんなに縛りつけてると思う?
帰り際にあんたの顔ほとんど見ないの、どうしてだと思う?
未来がまるで、罰ゲームのように思えた。