二月の保健室と私と先生

学校の保健室は、白いシーツと白いカーテンが冬の儚い光の影に揺れるだけだった。

保健室のベットの上で澪は、制服の中のシャツのボタンが一つずつ外されていくのを、胸元から伝わる感覚から感じていた。

「君は……いけない子ですね」

そう言って恐ろしく整った顔をシルバーのめがねフレームで隠している北村は、澪の上気した頬を優しく撫でた。

「先生、私……先生のことが」

この高校に入学して三年間、卒業を来月に控えたこの二月。澪は思い切って、保険医の北村に告白をしたのだ。

相手は二十八歳の男性、自分より十は上だ。社会人と学生という違いが今はとても痛々しい。

この高校に入学しなければ、自分は北村と先生と生徒という関係にならなかったのから。この先もずっと、この関係は変わらないと思っていた。

けれど、

──「僕も、澪さんが好きですよ」

いつもクールで無愛想といわれているその表情を緩めて、初めて手作りしたバレンタインのチョコを受け取った北村は言った。

そして、今、保健室の空っぽなベッドへ澪を組み敷いている。

澪の胸元があらわになると、北村はそこに顔をうずめて熱い息を吐き出した。

「……先生、恥ずかしい……です」

双丘の間から顔を上げた北村と目があうと、澪はふと視線をそらした。

「きれいですよ。澪さん」

あんなに恋しかった声がこんなに近くにいるのに。身震いしそうなほど怖い。

北村が澪のブラジャーを押し上げて、先端の熟し切れていない固い果実を口に含む。

「っあ!……あっ、ん!」

今まで味わったことのない苦しみに近い喜びが身体全体を駆け巡る。

澪が涙目になっているのを見て、北村は「痛かったですか」と心配そうに訊ねた。

「そ、そんなこと……」

ない。

「……」

そう言いたいのに、経験の違いからか、澪が口に出せないでいると、北村はくすりと微笑んだ。

「優しくします。だから、そんな顔しないでください」

「はい……」

澪の瞳に唇を寄せて、北村は涙を舌先ですくいとった。

そして左手で澪のスカートのホックを外して、太股をなで回す。右手は桜色に充血した乳首をなぞる。

保険医の白衣を脱ぎ去り、上半身裸となっている北村は、澪がイメージしていたよりずっと男らしい身体つきで、澪は目が離せなくなる。

「どうしましたか……」

北村に訊かれて、

「先生、本当に大人の男の人なんだなっと思って」

澪が何ともなしに言った台詞に、北村が珍しく感情をあらわにして反応をする。

「?誰と一体くらべているんです」

言い終わるやいなや、北村はさきほどまでより強く、澪の乳首に齧り付いた。

ギッ、と音を立てそうなほど強く噛まれて、澪は気づいた。

先生、怒っているんだ。私が、誰かと比べてると勘違いして……

「そうじゃな……っ、先生……っ、だ……っめ!」

声が抜けていく。

北村が澪の腰より下の茂みに指先を入れたからだ。

「反応がいいですが、これは誰かとの経験で覚えたのですか?」

「違います……っ、ん、っあ」

意地悪くそう微笑んだ北村の指先が、澪の中を掻き回す。

──せっかく先生と両想いになれたのに、勘違いされてるままはいやだ!

「先生……っ」

「何ですか……?」

澪からあふれ出た蜜を指先に絡め取った北村は、澪の濡れた瞳を見つめ返す。

「先生が……確かめてください……っ。私が処女だってことを……っ」

余計に熱を帯びて、澪の体がキレイな薄桃色に染まる。

「でも……」

北村が言いよどむ。

「先生……お願い……」

澪の願いを北村は聞き入れた。

「分かりました」

躊躇いがちに頷く。

生徒と保険医の境界線を卒業を一ヶ月前に控えたこの時期に乗り越えることに戸惑っているのだろう。

北村は自分のズボンを下ろして、澪の割れ目に肉棒を押し当てる。

「ん……先生……っ」

「きつい……ですね。どうやら、僕が澪さんのことを誤解していたようです。ごめん」

申し訳なさそうにいう北村の声を聞きながら、澪はシーツを掴んで唇を引き結んだ。

こうしていないと泣いてしまうからだ。

「どうしたんですか?怖いのですか」

北村に気づかれて、澪は慌てて首を振る。

「違うんです……。先生に、信じてもらえたことが嬉しくて……っ」

「澪さん……」

北村は澪の唇にキスを落とした。

「このまま、あなたの中に入ってもいいですか……?」

不安そうに訊ねられて、澪はこくんと、頷く。

「はい……っ」

それを聞いて安心したのか、北村は自身を澪の中にすこしずつ挿入する。先程までより時間をかけて。

「……っん、っあぁ、あぁん!」

腰を何度も動かしながら澪から溢れそうなほど、想いを捧げた北村は澪が疲れて眠っているその横顔を見て

「よく頑張りましたね」

汗で湿った前髪を撫でていた。

保健室のベットの横にある窓から吹き抜けた風が心地よく澪の汗を乾かしていた。