螺旋階段の人妻
カタン カタン カタン
…――――きたっ!!
すぐさまカモフラージュ用の携帯から目をそらす。
どくん…―どくん…―。と、早まる心臓。
履き慣れたジーンズの中ではぺニスが期待を抱き、大きく存在を膨らませてゆく。
そこは住宅街の中でも少々目立つような大きめの一軒家。
よく手入れされた芝生の庭には愛犬用の犬小屋がおかれ、窓には清潔そうな白のレースカーテンが揺れていた。
二階のベランダからは珍しい鉄製の螺旋階段が屋上へと続き、日当たりが良さそうな屋上ではガーデニングをしているらしい。
時々聞こえてくる、つっかえつっかえの子供のピアノの音や、手製クッキーを焼く香り
夜には家族の談笑が聞こえる、そんな理想的な家族の住まいだった。
ただー…。
ただ一つだけ違うのは。
(奥さんが痴女って事だ。)
亮太がそれに気づいたのは2ヶ月ほど前の事になる。
その日亮太は履修しなければならない講義が三限目からからあったので、少しゆっくり目の登校をしていた。
駅に向い歩いていたちょうどその時、亮太の上の方から階段を登るようなサンダルの音がした。
… カタン カタン カタン
何気なく音につられて、ふと顔を見上げた時だった。
ふわり。
…―急に吹いた風に真っ白なフレアスカートが大胆にひらめき、奥さんの臀部には紐でできたようなの真っ赤なショーツが見えた。
亮太と奥さんの間は5〜6メーターの差があったし、なにより数秒の事だったので幾分曖昧だが
それは確実にそこらで売っているモノではなく…いわゆる……大人のオモチャ屋に売られるような、かなりキワドイものだったのだ。
予期しなかった事態に、亮太があっけに取られ動けないでいると、螺旋階段の途中にいる奥さんと目があってしまった。
きれいな茶色に染められたセミロングの髪に、ピンクベージュでまとめられているナチュラルなメイク。
至って普通の主婦のようであるのに、亮太を見つめる目だけは湧き上がる欲情に濡れていた。
それはまるで、セックス時に挿入をじらされる事を恐れながらも望むような、マゾスティックな趣味をもつ恋人の哀願する瞳にとてもよく似ていた。
そして名も知らない奥さんのありかしからぬ姿に興奮し、不覚にも亮太のぺニスは大きく勃起してしまった。
絡み合う二人の視線。
しかし奥さんはモーションを起こすことなくすぐに二つのパンジーの苗を抱え、屋上へと軽々上っていってしまった。
もしかしたら小説のようなアバンチュールが始まるのではないか、と淡い期待を抱いていた亮太は肩すかしを食らったようになってしまった。
暖かな日差し降り注ぐ住宅街に、亮太は勃起したぺニスと思いよらない光景を抱え、一人途方にくれる結果となってしまった。
しかし、やはり欲望の渦はあの時たしかに生まれていたのだった。
亮太は思い返してみる。
亮太はあの日大学に行ってからも奥さんのことで頭がいっぱいで、一切が手に付かなかった。
あのショーツに意味はあったんだろうかとか、奥さんは欲求不満なんだろうなと考えていると
どうにもこうにも勃起が止まらず、次の日も同じ時間にあの家の前に足が来てしまった。
そうしたらまた奥さんはフレアスカートに、次は黒のショーツなのだから、やはり確信してしまった。
(奥さんは痴女だ。)
それからというものできる限り同じ時間にその家の前を通るようになり、最近はその時間まで携帯片手に待つようにしている。
奥さんはあの日からだんだんとスカートが短くなっていった。
フレアスカートからタイトなキャリア風スカート、雨の日などは傘とショーツの色を合わせたりということもしてくる。
最近ではミニのデニムスカートにノーパンが定番になりつつあり、そうなると亮太からはヘアはもちろん、てらてらに濡れた陰部も丸見えである。
螺旋階段の途中で鉢を重そうに置くときなどは膣の穴やアナルまで見えてしまう。
それは、大学や町にあぶれている女の子のすぐ開いてくれる股にあるものとはまったく違う代物に見える。
この奥さんの性器や肛門は、家庭に押しつぶされた欲望のはけ口であり同時に入り口なのだ。
一回入ったらもう抜け出すことなどできないし、全てを求め吸い取ってゆくだろう。
けれど、もう亮太と奥さんは引き返せない背徳の関係を背負い始めている。
一言でも声を交わしたら来世まで続く因果で結ばれそうな気がする。
(どうするかな?)
上目遣いで奥さんのマンコを見やる。
いつもよりぬれて歩くたびにくちゃくちゃと卑猥な音を立てている。
真っ黒な陰毛と真っ白な太もも、欲求不満のオマンコは黒いぐらいのピンク色、鮮やかなコントラストは永遠なる人妻の象徴だ。
亮太のペニスは、はり千切れそうな堅さと張りを帯びて射精を欲望する。
全身が震えるようなジレンマにおそわれ、小さな悲鳴を上げながら、目がくらみ倒れそうになってしまった。
「大丈夫?」
上から降ってきた高いトーンの言葉。
亮太は上を振り向き奥さんと目があってしまった。
さわやかな視線にやさしげな言葉。
しかしスカートの中に焦りを隠した悪魔の声のようにも聞こえた。
「ちょっと休んでいけば?」
家の庭にさく一輪のちいさな白い花が、風に揺れてゆらゆら揺れた。